「聞いてるの?さっきから生返事ばかりじゃない。」

「…聞いてるけど。」

いつからこんなにもさらりと嘘をつけるようになったのかと結人自身が驚いていた。

「私はね。常に一番じゃなきゃ嫌なのよ。この美貌も学業も全てが一番でなきゃ嫌なの。」

「ああ…」

全く興味のない話をどうやって切り上げるのか、一方的に捲し立てる一美を前にそんな事ばかり考え

「それがよ、唯一、秋川にとって私は二番目の女でしかないの。」

「ああ…なるほど。」

窓際の席に座っていた牧野一美はスッと立ち上がると平岩結人が座る隣の席までやって来ると椅子ではなく机に腰かけた。

「確かに秋川は私の体を求める代わり、私にとってメリットのある情報をくれるわ。」

結人は計算高い牧野一美ならそれはあり得る話だなと思いながらも出来る限り抑揚のない声で相槌を打った。

「へぇ…そうなんだ。」

「そうよ。簡単に一番なんてそう取れるものじゃないわ。努力と多少のリスクが必要なのよ。あなただって成績良いんだし分かるでしょ?」

平岩結人は目の前の机に座り制服のスカートの裾から覗かせた牧野一美の細く白い足に目がどうしても行くことを悟られやしないかと敢えて手元のスマホに目線を落としていた。

まるで新しいメッセージが届いていないかを確認するかのように。