「私の事…、汚い女だと思っているんでしょ?」




「…ごめん。何の話かよく分からない。」

そう言うと結人はその場から立ち去ろうとスマホを机の引き出しから取るために少し屈んでいた腰を立ち上がらせた。

「逃げるんだ。」

「ほんと悪いけど俺、急いでてーーー」
「平岩くん、私と秋川の関係知ってるよね?」

被せて一美が言う。

苛立ちも合わせて。

「ーーーはぁ…、だから何?」

結人は諦めてそのまま自身の席に着いた。

最早、癖になりつつある小さな溜め息をつきながら。

「秋川には婚約者がいる。そう来月この学校を辞める予定の清純を絵に描いたような国語教師と春に結婚するわ。」

「ふうん。」

その情報を結人も知ってはいたが敢えて知っているとも知らないとも言わなかった。

「恐らくーーー、私は捨てられるわ。」

「ふうん。」

「あの人とは体だけの付き合いなの。」

「ふうん。」

「私はそれをわかった上で抱かれているの……昨夜もね。」

意味深な目線と共に一方的に話す一美に結人はどう頭を巡らせても何と答えることが正解なのか既に分からないでいた。