「ここでいいわ。ありがとう、わざわざ送ってもらって。」
辺りもすっかり暗くなったことから平岩結人は牧野一美を彼女の自宅近くまで送り届けてやった。
「それじゃあ。」
そう言って立ち去ろうとする結人の制服の袖を一美は不意に引っ張った。
「ん?」
と振り返った瞬間、一美の柔らかなそれが結人の唇に重なった。
唇は一瞬で離れて行くと
「私、もしかしたら貴方のこと好きになるかもしれない。」
牧野一美が言った。
「私みたいな女は貴方みたいな人に好かれれば幸せになれるんじゃないかなって思うの。だけど貴方はーーーごめんなさい、変な事を言って。それじゃあ。」
軽やかに短めな制服のスカートの裾を揺らしながら一美は自宅へと帰っていった。