会えない分、声だけは必ず聴かせてくれる人だった。一晩空くくらいはもちろんある。でも次の日に『昨日はごめん』で始まる電話で安心させてくれた。

だから。

スマホが鳴らなかったその日もなにか都合が悪かったんだろうって。いつも通り『沙喜の声が聴けなくて寂しかった』って言ってくれるって。深く考えてなかった。

二日続けて沈黙したスマホに不安を覚え、三日目に思い余って自分からかけた。電源が入っていない、のメッセージが耳の奥に流れ込んだ瞬間。頭の中が白く焼けついてく。

電源が入ってない。拒否・・・?! うそ。そんなはずない、ナオさんはそんな人じゃないっっ。

心臓がこれでもかってくらい捩じり上げられて吐き気がする。内臓がぜんぶ千切れそう、クルシイ、タスケテ、イヤ、ドウシテ、ナオさん、ナオさん、ナオさん・・・!! 

何度かけ直しても繋がらない。突然、道を塞いだ黒い壁。上を向いても、右も左も果てが見えない。

また。捨てられたの・・・?
やっぱりあなたも、わたしを要らないの・・・?

なら。



もういいの。




最初から意味はないの。

わたしが生きる理由なんてどこにもなかったの。

わかってたの。

だからいいの。


サヨナラってずっと言いたかった。

解放されたかった。

なんの意味もないこのセカイから。



消えてなくなりたかった。