「おはようございます新宮さん。今日は二ヶ月検診ですので、歯の状態をひと通り診ますね。なにか気になったことはありますか」

マスク越しに笑んだ“吉見先生”。
クリニックに来るのは二ヶ月ぶりだけど、部屋でもときどき口を開けさせられてたし、問題がないのは折り紙付きなんだけど。

「特にはなかったです」

助手の女の子を意識して、普通の笑顔で短く返した。

「そうですか。じゃあ口を開いてください」

目の上を覆ったタオルが、ぐるりと顎の下あたりにもあてがわれる。
ナオさんに触れられるのは10日ぶりくらい? ぼんやり、そんなことを思う。

・・・彼女が来た夜は、医師仲間との親睦会で遅くなることも前の日に聞いてた。それを知った上でだったのかもしれない。
昨日、電話をくれたナオさんは医者らしく、検診の確認をしたけど。やっぱり何も知らない様子だった。

かえって助かった。わたしも何でもないフリができたから。