通うあいだに季節も進み。

一番ひどい歯の終わりかけに、さらに新たな虫歯発見。
先生も、ありゃって顔をしていた。

「また違うのを見つけちゃって、すみませんね。新宮さん」

申し訳なさそうに言われ、診療台の上で思わず吹き出す。

「先生は歯医者さんなんですから、当然ですよ」

「そう言ってもらえると気が楽ですが」

「近いですし、通うのは苦じゃないので。こちらこそすみません、長引く患者で」

「それこそ歓迎ですよ。なんて、不謹慎でしたか」

そんな軽い会話を笑顔で交わすくらいに、打ち解けてもいた。
あくまで医師と患者として。



特別な気持ちなんて、ないはずだった。

迷いのない先生の指が。口の中に埋まる時。・・・・・・なんだか。思い出す。

自分の指を舐めさせる男の仕草。

ヘンに意識するのを、自分で打ち消す。

・・・欲求不満とか。



32歳。バツイチで独身。いちおう、わたしを独占したがる男はいる。
月に1度か2度逢う、奥さんも子供もいる歳上の。

やっぱり足りてないのかな。
歯医者さん通いを楽しんでるなんて。


・・・・・・先生に触られるのは好き。なんて。