はじまりは。危うい綱渡りみたいな恋。・・・だったかもしれない。
ユウスケにさり気なく口説かれて、流された。

カラダを重ねるうちにいつしか、ただ来て、抱いて帰る。それだけになったから。芽生えた恋ゴコロは自分で蓋をして、枯らした。

今さら惜しまれても。・・・()うに枯れてしまった種に、芽吹く力なんてどこに。

「・・・・・・ごめんなさい」

マグカップに視線を落とし、応えられないことを謝った。

「どうしても、・・・か?」

「・・・うん」

ユウスケの問いに静かに頷く。
深い失望の溜息が彼の口から大きく漏れた。

ガタン。椅子が床を削る音。

「勝手にしろ」

冷めた捨て台詞が他に音のない部屋に残響して。
玄関ドアの閉まる音が、鈍くくぐもって聴こえた。