治療は順調に進み、週に1回の時もあれば、都合が合えば週の初めと終わりに予約を入れることもあった。

吉見先生は毎回、丁寧に経過を説明してくれ、患者の心細さを和らげようとしてくれる姿勢がうかがえた。

「ごめんなさい、ちょっと痛いけど」

そう言いながら容赦なくやっつけられる時なんて、真面目に涙が出ました。
謝ってるわりに絶対に手が緩んだりしないし、歯科医って絶対“S(サド)”だと思う。


でも。
薄い手袋越しの先生の指が、躊躇なく私の口に突っ込まれても。
嫌だと思ったことは一度もなかった。
信頼。・・・というか、委ねられた。この先生ならって。

迷いがないから。かな。
ひとつ間違えたら大変だし、繊細な治療ですごく神経を使うはずだ。
おっかなびっくりされたら、患者は不安でしょうがなくなる。
先生は全くそれを感じさせない。いつも。

すごいなぁって。
単純に尊敬した。

・・・・・・そんなことがきっかけだった。たぶん。