たいがい初回は、イタリアンに連れて行かれるものだけど。

「ここのは、ほんとになんでも美味いから」

グレーの三つ揃いに、薄桃色のワイシャツ、焦げ茶色ののネクタイ。こんな品の好い、スタイルも抜群なイケメンが定食屋さんて。

4人掛けのテーブル席に案内されて上着だけ取り、隣のイスの背にかけた先生は。向かいから悪戯気味に笑って、鯖ミソ定食を注文する。
悩んだ末わたしは生姜焼き定食。レバニラも美味しそうだったけど、臭いとか考えちゃったり。


「たまに休憩中に、車であの不動産屋さんの前を通るとさ。沙喜ちゃんが外で何かやってるの、見かけたりしたよ」

おしぼりで手を拭く気取りのない仕草さえ。好みだと思えてしまうあたり、すっかりこの人に落ちちゃってるなぁと観念。

「知らないあいだに見られてたんですね。今度見かけた時は、クラクション鳴らしてください」

「そうだね」

お互いにクスクス笑い。