あれから月日は経ち、
季節は秋から冬になった。

『同窓会か……

どうするかなぁ……』

はっきり言って、
僕は乗り気じゃない。

『何がです?』

僕は手に持っている
同窓会のお知らせを
掲げて見せた。

親しい友人はいたけど
身体のこともあり
遊びの誘いも断っていた。

それでイジメにあったこともある。

唯一、救いだったのは
共学だったこと。

『私が同伴したら行きますか?』

まぁ、同伴者可とは書いてある。

『凌杏はそんなに僕に
同窓会に行ってほしいのかい?』

『いえ、
どちらかと言いますと
私があなたの学生時代に
興味があるのですよ』

そういうことか(苦笑)

『わかったよ、一緒に行こう』

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**当日**

『段差、気を付けてくださいね』

凌杏は妊娠してから過保護になった(笑)

『大丈夫だよ、学校でだって
階段を上り下りしていたじゃないか』

うん?

そういういえば、校内では
あまりに過保護にならないな。

『校内は見取り図を
把握してますし、
うちは私立で無駄に
広いですから
エレベーターもありますので
安全面では心配してません』

確かにエレベーターを
使う頻度は増えたかな。

そんなことを考えていたら
後ろから声をかけられた。

「心綺人か?」

声の主は直ぐにわかった。

『廉耶、久しぶり』

振り返りながら
久しぶりに会う友人の名を呼んだ。

手は凌杏と繋いだままだけどね。

廉耶は僕のお腹を見て
目を見開いている。

十数年ぶりに会った
男友達が妊娠してたら
普通、吃驚するよね。

『吃驚しただろう(苦笑)

隣にいるのが
僕の旦那さんで
お腹の子の父親だよ』

凌杏に甘える仕草をしながら告げる。

『初めまして、
向瀬凌杏と申します』

律儀に自己紹介している。

「初めまして、花咲廉耶です」

続けて廉耶が自己紹介した。

『私は、年下ですので
心綺人と話す時のように
話していただければと思います』

三人で話しながら
会場になっている八階に
行くためにエレベーターに乗った。

*✲゚*。 ♪*✲゚*。 ♪*✲゚**✲゚*。 ♪*✲゚*。

「先生のところに
挨拶に行こうぜ」

廉耶は少し先に雲川先生を
見つけたらしく、そんなことを言った。

僕も挨拶には行きたいけど
凌杏から離れたくない。

そんな僕の気持ちを察したらしい。

「三人で行けばいいだろう?」

本当に昔から人の気持ちを
察するのが上手いよな。

『凌杏、一緒に来てくれる?』

自分は部外者だから
此処で待ってると言いそうだなぁ。

『えぇ、勿論ですよ』

よかった。

「決まりだな」

僕は凌杏に手を引かれながら
雲川先生のもとまで来た。

「先生、お久しぶりです」

廉耶が声をかけると
気付いた先生が嬉しそうに笑った。

「あら、花咲君と知らない子と
そっちは寿々崎君かしら?」

凌杏の後ろに
隠れるようにしていた僕。

「そうそう、心綺人と旦那さん」

廉耶が勝手に応えた。

「あらまぁ」

『初めまして、
向瀬凌杏と申します』

さっき、入り口で廉耶に
したのと同じ挨拶をしている。

「寿々崎君達の
担任だった
雲川月花咲です」

先生はあの頃から
変わっていない。

『心綺人、私の後ろに
隠れていないできちんと
ご挨拶されてはどうですか?』

年下の凌杏に言われちゃしょうがない。

『お久しぶりです』

凌杏の隣に立ち、挨拶をした。

当然のごとく視線はお腹にいく。

「そのお腹だと色々大変でしょう」

先生は僕が両性具有だと知っている。

『そうですね』

三人の子を産んだ先生は
パワフルだけど可愛らしい人だ。

「でも、よかったわ。

妊娠してるってことは
寿々崎君は彼の子を
産みたいと思ったんでしょ?」

そう、僕は凌杏の子を
産みたいと思った。

『はい』

雲川先生が頭を撫でてくれた。

「困ったことや分からないことが
あったら連絡してね」

鞄からメモ帳とペンを取り出し
連絡先を書いて渡してくれた。

『ありがとうございます』

お辞儀をして先生のもとを
離れて飲み物を取りに
行こうとしたら、久崎が来た……

「げっ」

廉耶が
嫌悪感丸出しの表情(かお)をした。

「さっさと行こうぜ」

飲み物は諦めて入り口に向かう。

僕の妊娠を知られたら
色々、言われるだろうし
面倒なことになるだろうな……

『そうだな』

しかし、
そう上手くはいかなかった。

「花咲・寿々崎、久しぶりだな」

「俺達に何の用だ」

廉耶がイライラしてる。

それもそのはず。

久崎は僕をイジメてたんだから。

『彼は久崎グループの
副社長ですよね?』

小声で凌杏が訊いてきた。

『そうだよ。

高校時代、僕をイジメてた
相手でもあるけどね』

僕も小声で答えた。

『だから、花咲さんは
あんなに嫌そうな表情(かお)を
されているんですね……』

苦笑しながら
凌杏と繋いでる手をギュッと握った。

「そう邪険にするなよ」

久崎は昔から
本当にしつこいんだよな……

「大した用がないなら
俺達は帰るからどけ」

イライラがピークに
なってきたんだろう
廉耶に凌杏が何事かを告げると頷いた。

その直後、凌杏が僕を
背に庇うようなしながら
久崎の横を通り過ぎた。

僕の腕を掴もうとした手を
凌杏が抱き寄せたことでかわせた。

『ありがとう。

廉耶、下で待ってるよ』

何か言いたげな久崎は無視して
同窓会の会場を出た。

*✲゚*。 ♪*✲゚*。 ♪*✲゚**✲゚*。 ♪*✲゚*。

「あの馬鹿のしつこさは
昔から変わってねえな……」

うんざりした
表情(かお)をしながらも
廉耶はわりと早く下りて来た。

『お疲れさん』

ふざけて言うと肩をすくめた。

あの性格でよく、
副社長やれてるような……

『花咲さんはこの後、ご予定は?』

会場となっていた
◆◆ホテルから出たところで
凌杏が廉耶に訊いた。

「特にないな。

妻には遅くなるって言ってあるし」

子育て歴は廉耶の方が先輩だな(苦笑)

『では、我が家へ来ませんか?』

妊娠がわかってから
一緒に住むようになった。

『心綺人は妊娠してますから
何処かお店に入るのは無理ですし
お二人も折角、
再会したのですから
積もる話しもあるでしょう?』

凌杏の思惑はわかった。

「俺は大丈夫だぜ」

タクシーを呼び、家に帰って来た。

最初は廉耶が
高校時代の話しをしたりしていたけど
その内、科学者二人の話しを
僕が聞いていた。

文系の僕にはよく分からない
数式やら、専門用語が
次から次からへと出てくる。

『お茶を淹れてこよう』

話しに夢中な二人を
リビングに残し、キッチンに向かった。

廉耶は泊まっていくことになった。