一刻も早くこの部屋から抜け出したい、という思いに駆られる。


ここに入る前よりも更に早くなった鼓動で、周りの酸素が薄く感じる。


この床に散らばったものを早く片付けて、すべて見なかったこととして忘れたい。


「なんだ、こういうの見たことないのか?」


「ないわけじゃないけど、でも実際にこういうのって、その……。やっぱり好き嫌いは人それぞれなわけだし、俺はあんまりこういうの好まなくて……!」


しどろもどろになる俺に、神崎はわざと手に持っているものを近づけてくる。


「やめろよ!」


思わず怒鳴り、突き飛ばす。


見えないが、神崎がバランスを崩して後ろへ手をついた音がした。


それでも、楽しそうな笑い声が狭い部屋に聞こえてくる。


「もう、いいだろ、行くぞ」


笑われたことに気分を害し、俺はさっさと立ち上がる。


「待てよハジメ」


慌ててダンボールの中身を元に戻している音を後ろに聞きながら、懐中電灯を持って部屋の出口まで行く。


ダンボールがさほど重たくないとわかっているから、もう手伝う気はなかった。


それでも、光だけでも当ててやると、そこにぼーっと突っ立っている神崎の姿が浮かんだ。


何か、考えているような表情に「どうかしたのか?」と、声をかける。


「うん? いや別に」


少し慌てたように笑顔を作る神崎。


そして、ようやくその部屋から出られた時に、俺は大きく安堵のため息を漏らしたのだった……。