木製のドアの向こうには、やはり闇が広がっていた。


頼りない懐中電灯の光で足元を照らし、ゆっくりとその中に足を入れる。


真暗な底なし沼が続く中、照らし出された部分だけ足の置き場がポツポツと現れる。


神崎の後ろについて歩きながら、生唾を飲み込んだ。


静かな中では、喉を鳴らす音が大きく感じる。


「何だこの部屋」


壁や床をなぞる懐中電灯は何も浮かび上がらせず、ただ扉からまっすぐに長方形の部屋がそこに存在するだけだった。


けれど、普通の何もない部屋とは違う、『何か』がある。


そういう感覚を肌で感じていた。


何もない空間では、神崎の声ももっと響くはずだ。


「神崎、光を」


俺はその『何か』に気付き、懐中電灯を奪い取った。


ただの壁だと思っていた部分をもう、一度照らす。


「これは……」


神崎がそう言ったきり無言になる。


ダンボールだ。


大きなダンボールが壁一面に渦高く積まれている。


この部屋は元々長方形ではない。


ダンボールが積まれることによって正方形の部屋が長方形になっていただけだ。