「……おかしいなぁ」


何度も何度も、ヘアピンの形を変えては差し込んで無茶苦茶に動かす。


それでも開かない鍵に、ジットリとした汗が額からにじみ出る。


例えばこれが小説なら、例えば俺が主人公なら、ここで上手く開くんだけどな。


残念ながらこれは小説じゃないし、俺は主人公でもないようで、開かないものは開かない。


「頼むよおい……」


いくら鍵穴へ向けて懇願したところでそれは無意味なことで、俺は半泣き状態になる。


「なんなんだよぉ」


俺の情けない声が廊下に響いたとき、『カチャ』という、ドラマで使われる開きました。の合図が聞こえた。


驚いて、一瞬固まる。


それから開いたのだという実感がジワジワとこみ上げ、口の両端が上がっていく。


「開いたぞ!」


喜んで隣の神崎を見ると、手には金の棒が握られていて、ドアの隙間から抜き取るところだった。


「あぁ、開いたな」


平然として答える神崎に、俺は呆然とする。