だけど大丈夫、ブレーカーは落としたのだから。


光が、カメラから右側の壁へと移動した。


そのに浮かんだのは、何の変哲も無い扉。


「ここか」


「あぁ」


念のため、という感じで神崎が何度かドアノブを回してみる。


ガチャガチャと音を立てるだけで、当然開く気配はない。


それを確認してから、神崎は一つ大きな深呼吸をした。


ここでピッキングを成功させなければ、意味がない。


ポケットの中からヘアピンと、くの字に曲がった棒を取り出す。


最初にヘアピンを鍵穴へ差し込み、テレビドラマを見よう見真似で動かしてみる。


ドラマなんかだと、しばらくいじっていた後『カチャ』と、いかにも開きました。

と知らせる音が響き、主役は親指を立ててみせるもの。


しかし、そんなこと現実に起こるわけがない。


ただひたすらヘアピンを無茶苦茶に動かしている内に、鍵穴が壊れてしまうんじゃないかと思うほど手つきが乱暴になる。


「おい、無茶するなよ」


俺が背後からそう声をかけると「やっぱり無理か」と、ため息まじりに肩を落とす。


俺は鍵穴に突き刺さったままのヘアピンを抜いて、その形を少しだけ変えてみる。


これでどうにかなるとは思えないが、どうにかなる場合もあるのではないか?


そんな淡い期待から、今度は俺が挑戦してみることにする。