「なぁ、ハジメ、俺本当に感謝してるんだ」


神崎は眉をハの文字に歪めて言う。


「そこまで感謝されても、困る」


「いやいやホント、家の庭で倒れる人間も始めてみたし」


「そこまでバカにして楽しいか?」


「バカになんてしてないしてない。するわけないだろ? な、ハジメ」


「うるさい、呼び捨てにすんな。俺とお前、全然仲良くなんかないんだからな」


また、口がブレーキをきかない。


なんだ、こいつ。


こいつと話してると自分が自分じゃなくなるようだ。


それとも、まだ俺は熱にやられているのだろうか。


「で、どうした?」


突然、神崎が真剣な口調になった。


水のおかわりを勝手にペットボトルからついでいた俺は手を止めて、『何が?』という視線を投げかける。


「結構うなされてたから」


その言葉に、俺は河川敷の夢を思い出した。


あの場所は今でも好きだ。