鏡の下には小さなコマが付いていて、簡単に道は開けた。


何も二人がかりで押す必要はなかったようで、俺はつい笑みを零す。


鼓動は好奇心や不安から高鳴っていたが、笑う余裕がまだ残っていたみたいだ。


神崎が、鏡を壁の左側にピッタリへばりつけると、その向こうには先ほど聞いたとおり廊下が続いていた。


しかし、その廊下が別世界のものに思えて、思わず振り返る。


間違いなく同じ廊下が続いているのだけど、鏡があった場所を境にして空気が変わっている。


それは単純に空気の流れが遮断されていたせいなのか、それともこの奥の部屋から漂う異様な雰囲気のせいなのか。


その答えが出せないまま、一歩前へ踏み出した。


一瞬、ヒヤリとした空気が頬を撫でる。


冷凍庫のドアを開け、冷気を浴びたような感覚。


「あれがカメラだ」


数歩進んだ先を神崎が照らす。


天井の真ん中に取りつけられた一台のカメラがこちらを向いていた。