ブレーカーを落としても、闇の中には変わりなかった。


本当に電気が使えなくなったのか、部屋で何度か確認をしてみる。


「大丈夫そうだな」


屋敷は広い、だけど自然と小声になってしまう。


きっと、第一段階が終ったところでようやく実感したのだ。


自分たちが何をしようとしているのかを。


暗闇で相手の顔もろくにわからないまま、永遠にも感じる長い廊下を歩く。


頼りになるのは、たった一つの懐中電灯だけ。


それから徐々に目が慣れてくると、昼間見た沢山の絵画が認識できるようになった。


こんな夜中だと、身震いするほど不気味だ。


「その部屋って、どこなんだ?」


気分を紛らわすために、声をかける。


「ダイニングルームの横だよ」


「ダイニングルームの?」


「あぁ、夕食の時気付かなかったか?」


そう言われて、俺は数時間前の記憶を呼び覚ませる。


けれど、何も思い出せない。


ダイニングルームの横にあったのは、ただの壁だ、間違いない。


だって、あの部屋は廊下を突き当たって右にあったのだから。


首を傾げている俺に、「ダミーだよ」と神崎が言った。