言いながら、またベッドの下からいやらしい本を取り出す。


なんで隠し場所がわざわざこんなところなんだろう。


「なんだ、これ?」


俺は細く丈夫そうな金の棒を受け取って首を傾げた。


先端がくの字に曲がっているが、それ以外はなにもない。


「ドアの隙間から差し込んで、この先端でカギを回すんだ」


なるほど。


外にいながら内側からカギを開ける方法か。


俺が考えていた以上に用意周到な神崎を、思わず尊敬の眼差しで見てしまう。


ここまで準備したものの、監視カメラの存在がどうしても邪魔をしていたワケだ。


神崎が、一度大きく深呼吸をする。


それに合わせて、俺も呼吸を整えた。


お互いに目を見交わせ、はやる好奇心を何とか押しとどめる。


その時、夜中の二時を知らせる柱時計の音が、屋敷中に響き渡った……。