「目、覚めたか」


「おかげさまで」


「気分、どうだ?」


「最高に最低」


「それならいい。水飲めよ」


神崎に支えられながら、コップ一杯の水を一気に飲み干す。


大きな氷が入っていておいしい。


カラカラになって干からびたミミズが水を得て元に戻っていくみたいだ。


本当は魚で例えたい部分だが、今の俺はミミズでも魚でも似たようなものだった。


なんならナメクジやカエルでもいい。


「ありがとう」


散々神崎に対して嫌味を投げかけた後なので、優しくされると少し困るが、なんとか『ありがとう』の五文字が出てきてくれた。


「いや、こちらこそありがとう」


「はい?」


「脱水症状で倒れた人間を始めてみた。貴重な体験だよ」


神崎は俺のことをバカにしているのかもしれない。


でも、バカにされることには慣れている。


俺は顔色ひとつ変えず「あ、そ」と、答えた。