「起きろよ!」


耳元で怒鳴り、体を揺さ振る。


けれど、神崎は少し寝返りを打っただけで反応しない。


顔のマンガが落ちてマヌケな寝顔が現れる。


ファンクラブの女の子なんかが見たら、絶叫するかもしれない。


「起きろってば!」


もう一度怒鳴ると、ようやく寝ボケ眼が開く。


「んあぁ~……」


「もう一時だぞ、丑三つ時まであと一時間!」


神崎の目の前に、目覚まし時計を突き出して言う。


「なんだ? こわくてトイレ行けないのか?」


こいつ、完璧寝ぼけてやがる。


俺は神崎の両腕を引っ張って上半身を起こさせると、その顔の前で一回強く手を叩いた。


その音に驚いて、体が三センチほどベッドから浮き上がる。


何度か瞬きをした後、俺の顔を見て微笑んだ。


「おはようハジメ」


「おはようじゃないだろ、ったく」


「朝のモーニングコーヒーでも飲むか?」


「今は夜中」


「朝でも夜中でも、寝起き一発目にハジメの顔を拝めるなんて幸せだにゃん」


大きな男が何故か俺に甘えてくる。