そうして、今俺はここにいる。


計画実行まであと一時間。


もう家政婦さんは先に寝てしまっていて、屋敷の中は暗い。


最初はここに来る事をとことん拒んでいた俺だけど、今は来てよかったと感じている。


計画うんぬんの話ではなく、神崎と真正面からちゃんと話ができたことが嬉しい。


「なぁ神崎」


俺が背もたれにしているベッドで、マンガを読んでいるはずの神崎へ向けて、話かけた。


静まりかえった部屋の壁に声が反射して、少しだけ響く。


ここまで静かなのは、屋敷の塀が外の音を寄せ付けないからだろうか。


「神崎?」


返事がないので振り返る。


そこには、マンガを開いたまま顔の上に乗せて寝息を立てる神崎の姿があった。


「お前なぁ……」


文句を言いながら起こそうとするが、定期的な胸の上下に一瞬躊躇する。


起こすとかわいそうかな、なんて甘い考えが頭をよぎってしまったのだ。


だけど、俺がここにいるのはハッキリ言ってこいつのせいだ。


遠慮なくたたき起こしてやることにした。