「夏の天気には雨と雷がつきものよ」


「確かにそうだけど」


「雨と雷といえば、停電なんてこともあるわ」


「最近ではほとんどないだろ」


「一瞬だとしてもある事はあるわ。その一瞬で家中の電気はすべて消える」


なんだか優奈の考えが読めてきたぞ。


俺は残り一口のオレンジジューズを飲んで、耳を塞ぎたくなる気持ちを押さえ込んだ。


「夜中にブレーカーを落として、監視カメラを使えなくするのか!」


最悪なことに、神崎の喜ぶような歓喜の声が最後の言葉を言い放った。


「そういうこと。夜中だから家政婦さんも気付かないわ」


「すべてが終ってからブレーカーを元に戻せば、朝になっても誰も気付かない」


一気にテンションを上げる二人に、俺は慌てて「無理だよ!」と水をさした。


このまま勢いに乗って話を進められたら、困る。


さっきから、嫌な予感が胸の奥で大きく大きく育ってきているのだ。


これはきっと巻き込まれるに違いない。


「停電するほどの雷で家政婦さんが起き出さないなんて、考えられない。旅行中の親は騙せても、家政婦さんは騙せないよ」


一気に言って、ホッと息を吐き出す。


どうにかこの計画が破綻しれくれればいいのだが。


「そこは、お兄ちゃんの演技力にかかってるわ」


真剣な表情で優奈がそう言った。