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今日のファミレスにて、山の天気は変わりやすい。


優奈の提案した計画とは、そこに注目したものだった。


「最初に……、流ちゃんのご両親どの辺の温泉に行くの?」


その質問に、神崎は「山瀬温泉」と答えた。


クリームソーダのアイスが溶けて力を無くし、メロンのグリーンを白く濁らせている。


「秘湯中の秘湯だな」


オレンジジュースがあと一口残っているコップをいじりながら、俺が呟く。


山瀬温泉と言えば、その良心的でない場所と良心的でない値段から、近くの人間でも行ったことがない。


たまに、本格的な登山家や温泉好きで物好きな人がその場所を探し求めてきているらしいが、そうでなかったら行こうなどと考えない場所。


だから秘湯なのだ。


「ヘリを使っていくらしい。場所はとんでもない山の頂上だけど、温泉や施設なんかは高級ホテル並みだとか」


さすが、金持ちのやる事は違う。


「だと思ったわ」


優奈の自信満々な言葉に、「どうして?」と聞く。


「近くの温泉って言っても、一応は新婚旅行でしょ? そんな安っぽい場所は選ばないと思ったの。だとしたら山瀬温泉が一番の候補に上がるのは当然だわ」


優奈はふふんと、自慢げに鼻を鳴らしている。