また、かけていないメガネをかけ直し、俺を見てくる。


「はい、わかりました神崎先生」


俺がおどけて言ってやると、神崎はくすぐったそうに首筋をかいた。


たぶん、俺がはじめて神崎のボケに乗ったからだ。


「ところでハジメ君」


「なんですか? 先生」


「今回の件は本当にうまく行くと思うかね?」


「それは……なんとも言えません」


仮にうまく行ったとしても、その部屋へ入って何を見るのだろう? もし、重大な秘密なんかだったらどうする?


俺は心の中で、その部屋がなんでもないことを密かに祈る。


「もう十一時が来る」


いつの間にか、テレビでは映画のエンディングが流れ始めていた。


計画開始まで、あと三時間。