「ほしいのか?」


「へ?」


「その地球儀、ずっと見てるから」


「あぁ……別に」


慌てて地球儀から手を離す。


そんなにずっと見てただろうか?


「俺が小学校の頃に図工で作って、母親にプレゼントしたんだ」


そう言いながら、今度は神崎が地球儀を回し始める。


「人間、どれだけ頑張ってもここでしか生きられない。宇宙での生活なんてSF小説くらいなもんだ」


神崎はそう言うけれど、この狭そうに見える地球だって俺たちからすれば十分にデカイ。


けれど、重力で縛られてどこへも行けないというのは確かなことだった。


まるで地球全体が当時の学校のように見えて来る。


この地球上でどれだけの人が日々息苦しさを感じながら生活をしているだろうか。


「この狭っくるしい重力で縛られた世界でな」


俺は嘆息して呟く。


「そ。だから、せめて『普通』には縛られたくない」


軽快な声色で言う神崎に俺は口角を上げて笑った。


「はいはい」


「はい、は一回だぞハジメ君」