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気付いたら、俺は河川敷に立っていた。


家から徒歩十分ほどの場所にある、小さな川。


まるで人目を避けるように大通りをグニャリと外れ、細く頼りない流れになってそこにある。


この小さな川が、俺は好きだった。


小学校の頃、放課後になると毎日のようにこの川へ足を運んでいた。


水が流れる音とか、木の枝が風になびいてキラキラ揺れる影とか。


変わりなく出迎えてくれる風景のおかげで、俺はその日の出来事をすべて笑い飛ばすことが出来た。


靴に刺さった画鋲も、一人だけ離された机も、黒板のひどい言葉の落書きも、俺を見て大きくため息をつく教師も。


すべて、この川に流してきた。


今回だって、きっとそうだ。


この頼りない川が大きな希望となって俺を助けてくれる。


俺の前から、神崎流星という人間を、洗い流してくれる……。


額に冷たいものが乗っかり、俺は目を覚ました。


少しぼやける視界でも、ここが自分の部屋ではないことがわかる。


そして、降り注ぐ声で思い出す。