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人間、この時間になにかしよう。


という考えを持っている時や、何かをひたすら待っている時は、時の流れがカメのようにノロくなって感じる。


俺は何度目かの時計のチェックをした。


さっきから30分も経っていない。


「夜はまだまだこれからだぞ」


そんな俺に気付いて、テレビに夢中になっていた神崎が言った。


ずっと何もない部屋にこもっていては怪しまれるので、今は二人でリビングにいる。


大理石のテーブルを真ん中にして、コの字形の白いソファが置かれている。


ダイニングルームにあったしっかりした肖像画より、もっと優しい色合いの、ピンボケしたような絵が飾られているため、今は視線も感じない。


だけど、大型液晶テレビの両端に置かれている女の裸体の石膏は、目のやり場に困ってしまう。


正直、神崎の父親の趣味を疑いたくなるような、統一性の無い屋敷だ。


「なんか落ち着かないな」


色々な意味を込めて言うけれど、神崎は返事をしない。


テレビでは有名なホラー映画をしていて、グロテスクなシーンがさっきから繰り返されている。


食後に見るものとしては最悪だ。


「録画もしてるんだから返事くらいしろよ」