床はすべて赤いカーペットが敷き詰められていて、時々置かれている壺や絵画なんかに目を引かれた。


見たところでそれが何か、なんてわかるワケでもないけれど、目の保養になったことは確かだと思う。


この部屋は廊下の突き当たって右側にあるのだけれど、その正面には大きな壁掛けの鏡があって、自分の姿を見るのが少々照れくさかった。


「お前の部屋、なんであんなに狭いんだ?」


普通の感覚からいえば12畳は決して狭くない。


けれど、この豪邸から見ればとても狭い一室になっている。


「広い部屋って苦手なんだよ。最初は物置になってたんだけど無理言って空けてもらった」


「へぇ、意外と庶民的なんだ」


「当たり前だろ、親が再婚してまだ数週間だ」


笑いながら言う神崎に、そうだった。と、思い出す。


けれど、この屋敷に慣れるにつれて感覚もどんどん鈍っていくだろう。


そう思うと、なんだか切ない気分になった。


「……神崎って名字も」


神崎が手を止め、なにか考えるような表情を浮かべて呟いた。


「へ?」


「この名字も、夏休みが終わると『西乃院』に変わる。本当はもう変わってるけど、休み明けまで誰にも言わないつもりだった」


「西乃院……」