「あ、おかまいなく」


シチューのおかわりを出してくれる家政婦さんに、俺はペコペコ頭を下げる。


神崎家のダイニングルームはとにかく広い。


昼のテレビドラマなんかで出てくるような細長いダイニングテーブル。


その真ん中にはピンクと白の花が飾られていて、両端には俺と神崎二人分の皿とナプキンがキチンと用意されていた。


背が低く、ふっくらとした体格の家政婦さんは、突如泊まることになった俺のために、夕飯を準備してくれたのだ。


ニコニコと終始笑顔を絶やさない家政婦さんはとても人が良さそうに見える。


ダイニングルームには豪華なシャンデリアが下がっているが、一般家庭に見られるテレビがない。


テレビを見ながらご飯を食べるなんて、きっとあり得ないことなのだろう。


それにしても、壁にかけられているいくつもの肖像画から視線を感じて、さっきから落ち着かない。


「すげぇな」


家政婦さんが一旦部屋を出たとき、遠くの神崎へ小声で言った。


「なにが?」


「なにがって、この部屋……。この屋敷全部」


「あぁ、豪邸だからな」


そんな話興味ない。


という素振りで神崎は食事を続ける。


この部屋へ来るまでの廊下も、まさに豪邸そのものだった。