「昔、イジメられてたんだ。もうずっと前、小学校の頃」


「うん」


「毎日毎日、学校に行く前に吐くほど憂鬱だった」


「うん」


「だけど、毎日学校には行ってた」


「……行かされてた、じゃないのか?」


いつもより優しい口調の神崎に、俺はまた涙がこぼれる。


目の奥が熱くて、頬につたう涙は冷たくて。


いっそのこと、この大きなクラスメイトの腕で泣いてしまおうかと考える。


しかし、それを何とか押しとどめて、ティッシュで鼻をかんだ。


「一度、イジメのことを両親に相談した。学校には行けないと、ちゃんと伝えたんだ」


「偉いな」


「だけど、帰ってきた言葉は『甘ったれるな』だった。その一言だけだった」


また、神崎が俺の背中をさすり出した。


大丈夫、ちゃんと聞いてるからゆっくり話せばいい。


そんな気持ちが背中からジンジンと熱い塊になって俺に流れ込む。


「後は、毎日繰り返されるイジメと、両親から浴びせられる言葉に耐えるしかなかったんだ」


「『イジメられる側にも非がある』」


背中の手が止まった。


見ると、真剣な表情でテーブルを見ていた。


白いテーブルに何かを映し出しているのかもしれない。