「だけど俺は……」


何か言い返そうとしたけど、声が震えて言葉にならなかった。


だけど、俺は言われ続けてたんだ。


『いつまでイジメられたことを怖がってるんだ』


『イジメられる方にも問題があるんだぞ』


『お前がもっと強ければ』


『小学校の頃の話だろ? 忘れろよ』


『お前がしっかりして……』


『お前がもっと……』


『お前が……』


「うるさい!!!」


テーブルを叩くと同時に、頭の中の言葉たちを思い切り吹き飛ばす。


スナック菓子の袋とマンガが落ちて、床に散らばった。


「ハジメ?」


神崎が驚いてこちらを見ている。


「俺は……ずっと……」


涙が流れた。


本当は、ずっとずっと誰かに理解してほしかったんだ。


傷を持っている俺自身を、受け止めてほしかったんだ。


少し呼吸が乱れて、神崎が背中をさすってくれる。


そして、こいつは何も聞かない。


俺から嫌な記憶を無理矢理聞きだそうとはしない。


今まで、大人たちがしてきたこととは全く違う。