「おぉ~、なんかかっこいいぞハジメ」


「そうかな」


予想外に褒められて、少し照れる。


「じゃあ、あたしみたいな子はどう?」


途端に体をクネらせる神崎。


大きな目で何度も瞬きをしてみせるけれど、大男のぶりっ子ほど妖怪めいたものはない。


「はい?」


「勉強できるしスポーツも得意だし、皆に大人気。今なら流子、ハジメだけのものになって、あ・げ・る」


唇を突き出してキスをねだる神崎を押しのけながら、笑う。


「勘弁しろよ、流子ってとりあえず『子』つけたらいいってもんじゃないぞ」


「つれないのねハジメ」


「当たり前だろ、こんなネタで乗ったらお前本当になにかしてくるだろ」


「なにかって……ナニですかぁ?」


両手をいやらしく動かしながらハァハァと口で息をする。


いくらカッコよくても、これじゃ本物の変態と同じだ。


「お前、あんな事あったのに、よく毎日そんなに元気だな」


つい、ため息をつきながらそう聞いた。


本当はずっとこの質問をしてみたかったんだ。


「へ?」


「お前だって持ってるだろ、トラウマ」


「トラウマ?」


「うん。虎と馬じゃないからな? 過去の嫌な思い出だ」


「あぁ……別に?」


「別にって、そんなワケないだろう?」


「どうして?」