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この前来た時よりも人間の住処らしくなってる。


それが、神崎の部屋に一歩入った第一印象。


始めて来たとき、というか運び込まれたときは家具も少なく、生活感もほこりもなかった。


だけど、今日は違う。


真ん中に丸くて白いテーブルが一つ置かれていて、その上に何冊かのマンガがバラバラに置いてある。


部屋の隅っこには二つの大きなダンボールがあって、『流星、夏服』と書かれていた。


「まだ服なんかも片付けてないんだな」


俺は視線を神崎へ戻して聞いた。


「あぁ、そういうの面倒なんだ」


ハニカんだ笑顔で、神崎が俺に麦茶を出してくれる。


ここにくる前コンビニで買った、大量のお菓子が入っている袋をテーブルに置いて、ベッドの下を覗き込んでやった。


生活感が出てきたということは、もちろん、そんなものがお目見えできるチャンス。


もちろん、こんなこと優奈の前じゃやらない。


優奈は俺たちの検討を祈ると敬礼をして、家に帰ってしまっていた。


さすがに、よく知りもしない男の家に上がり込むのは遠慮したようだ。


その辺の遠慮すらないのが、神崎だ。


「あっ、なっ、ハジメ!」


ベッドの下をのぞき込まれて慌てる神崎。


慌て過ぎてなにもないところで躓いて、こけそうになっている。


「あははは、お前がそんなに慌てるところ始めて見た。いいじゃん、ベッドの下なんて思春期の男にとって宝箱。そんなの誰だって同じだよ」