プレッシャーを感じて、何も答えずにハンバーグを口に入れる。


さっきまでおいしかったハンバーグが、今はなんの味もしない。


期待に満ちた二人の視線に、舌がピリピリと痺れてくる。


自慢じゃないけれど、俺は学園祭などで大役をまかされたことは一度もない。


幼稚園からずっと、劇は脇役。


誰が決めたワケでもないのに、それは必ず決まっていた。


そういう奴っていると思う。


特に目立ちもせず積極性もない人間が、毎回毎回数合わせのように使われる。


それでも、大道具などでなく舞台に立てることを親は喜んでいたものだ。


実際は、誰もやりたがらない役を押し付けられただけの話だというのに。


急に吐き気を感じて、俺はまだ口の中にあったハンバーグのカケラをナプキンに吐き出した。


どこにも居場所がないのが、俺の居場所。


誰も見向きもしない雑草の一本。


誰もそれが俺だとは気付かずに、簡単に踏みつける。


「ハジメ、お前が必要だ」


吐き気で泣き出しそうな俺に気付いていない神崎が、真剣な表情でそう言った。


「……それは、今日だけだろ」


思わず言ってしまった言葉。


劇は今日だけ。