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ファミリーレストランの一番奥の四人席。


俺と神崎はオレンジジュースで、優奈だけメロンクリームソーダを注文した。


それぞれの飲み物で喉の渇きを潤してから、優奈が一旦座りなおし、口を開いた。


「それでは、作戦会議に入りたいと思います」


キビキビとした口調で言い、手帳とペンを取り出す優奈。


ショートカットの髪が真上の電気に照らされて、天使の輪を作っている。


気分はすっかり探偵モード。


末は金田一耕助かホームズか。


どちらにしても、客からはしっかり金を取るんだぞ優奈。


心の中で妹を応援しながら、優奈の手元を見る。


「神崎邸……秘密の扉大作戦?」


手帳に書かれたあまりにも捻りのないタイトルに、俺は呆れた声を出してしまう。


「そうよ、何か文句ある?」


「いえ、別にないです」


一瞬睨みをきかせてきた優奈に、俺は思わず敬語を使ってしまう。


それを見て、隣にいる神崎が俺のわき腹をつついてきた。


なにが言いたいのか聞かなくても、その表情を見ればわかる。


悪かったな妹に弱くて。


俺の言いたいことはすぐに理解できたらしい、神崎がヒョイと肩をすくめてみせた。


「神崎流星君!」


「あ、はい!」


優奈の大声に神崎は大きな体ろビクリと跳ねさせて、背筋を伸ばした。


「あなたの家に、入ったこともない部屋がある、ということは間違いのない事実ですね?」