妹にまでそんなことを言われると、更になさけない気分になってしまう。


格闘家までとは言わないが、普通の男としてもっと強くなりたい。


「大丈夫か? 歩けるか? なんならオンブしましょうかお姫様」


神崎がヘラヘラと笑いながら俺に手を伸ばす。


「触るな! 誰がお姫様だよ、気持ちわるいな!」


「大丈夫大丈夫、ハジメ軽いから、遠慮すんなって」


「遠慮する、絶対に遠慮する! 男の俺が男のお前にオンブなんてされてたまるか」


「なぁにハジメ、そんなこと気にしてんの? 言っただろ、『普通』を『普通』と呼ぶ事は大人になってからでもできるって。今はさ、それに囚われることなく男同士、オンブしようぜ」


ニカッと白い歯を覗かせて笑う神崎。


「爽やかな笑顔で何ぬかすんじゃ!!」


鋭い突っ込みのあと、優奈の笑い声が高らかに響いた。


夏の日差しを跳ね返すような、明るい笑顔。


その笑顔に、俺と神崎は顔を見合わせて軽く頷いた。


別に優奈を笑わせるために面白い事を言い合っていたわけではないが、その笑顔を見せられたらそこで終らせるワケにはいかない。


神崎も、同じ気持ちみたいだ。


「まったく、お前はいつもいつもいつも、なんでそう俺にちょっかい出すんだよ」


俺は神崎へ向けてシッシと手を振る。


「なんでって、理由がなきゃダメ?」


神崎は目を潤ませて俺を見る。