どうしてだ?


こんなに頑張ってるのに、俺、なにか変な事言ってるか?


笑顔が強張り、声が震える。


こわい。


もう遅いかもしれない。


意見の食い違った優奈と神崎は、俺のことを嫌いになったかもしれない。


絶対にそんなことはないと、理性ではわかっている。


わかっているのに、高速のメリーゴーランドのように悪い思考が頭の中をグルグルと巡る。


そのスピードで心が死んでしまいそうだ。


「あぁ、それはわかった。それより顔色悪いぞ?」


神崎の手が、俺のおでこに触れた。


男の、大きくて分厚い手がなんとか俺を『今』の現実へ引き戻してくれる。


『今』はあの時じゃない。


あの時とは違うんだ。大丈夫、しっかりしろハジメ!!


自分で自分に言い聞かせて、体の振るえを止める。


けれど、気分の悪さは元には戻らず、神崎に抱きかかえられてベッドへ運ばれるハメになってしまった。