「オヤジは他人を家には入れない主義なんだ。たまにどうしても必要な時に、家政婦を止まらせる程度。それに……なんとなく、雰囲気だよ」


「雰囲気?」


優奈の表情が険しくなる。


名探偵は決して見た目や個人の会見だけで物事は判断しない。


今の優奈には、そんな鋭い眼光があった。


「そんなもんで言い切るなよ」


「でも、一度あの部屋についてオヤジに聞いてみたことがあるんだ」


「へぇ?」


「ふぅん?」


「そしたらさ、無言のまま愛想笑いしたんだよ」


真剣な表情の神崎に、俺は肩透かしをくらった気分になる。


なんだそれ、たかがそれだけのことで大問題みたいに話しをデカくしてるのか。


俺は呆れてしまって大きくため息をついた。


もっと重たい事情でもあるのかと思っていたのに、妖怪の一旦木綿くらいに軽い話だ。


こんな話の場合は、せめてこなきじじぃくらいの重さはあってほしい。


「愛想笑いくらい誰だってするさ」


「それは怪しいわね」


今度も、俺と優奈はキレイにハモった。