「そゆこと」


「勝手に入れば?」


「ハジメくぅん、勝手に入れたら入ってるわよ、あたし」


クネクネと体を寄せ付けてくる神崎を押しのけ、「どうして入れないんだ? もうあそこはお前の家でもあるのに」と、突き放す。


「義理父に悪いから、とか言うなよ? お前そんなキャラじゃないんだから」


「あら、あたしのキャラよく知ってるのね」


「気持ち悪いから寄るなってば。何が問題で入れないんだよ」


「それがね、ついてるのよ」


「は?」


「つ・い・て・る・の」


一文字づつ耳に息を吹きかけながら言われて、俺は思わず神崎の顔面を手の平で叩いていた。


パチンッといい音が部屋に響き、優奈が驚いた悲鳴を上げた。


「あ、つい」


冷たくそう言い手をどかすと、そこには鼻血を噴出した神崎の顔があった。


まずい、気持ち悪すぎて力を入れすぎた。


慌ててティッシュを渡すと、涙目のまま「ごめん、調子に乗りすぎたな」と情けない声で言う。


そんな神崎を優奈が「ちょっとお兄ちゃん、かわいそうじゃない」と、かばうものだから、いつの間にか俺が悪者。


なんだか理不尽なまま、こっちも謝るしかなくなってしまった。