「『アディオス』の意味だけど、結構重たい意味だったみたいだな」


あの後何気なく調べたんだ。


最初の頃神崎へ投げかけた言葉の意味を。


「ん、あぁ。そうなのか？」


「まさか知らなかったのか？　『またな』って意味で通常使用されているのは『チャオ』の方だったぞ」


「へぇ～？」


興味なさそうな声を出す神崎。


あの時、わざと間違えた知識を俺に伝えたんだろうか。


俺に近づくために……って、それは考えすぎか。


１人で首をひねっている俺に神崎が「百面相」と呟いて噴き出した。


「なにが百面相だ。人の顔を見て笑うな！」


殴り掛かるふりをすると神崎が笑い声を上げながら部屋の中を逃げ惑う。


「きゃ～やめて！　襲われるぅ！」


ケラケラと笑い声を上げながら俺から逃げる神崎。


「なになに？　なに楽しそうなことしてんの！？」


ノックもなしに優奈が部屋に入って来て更に騒がしくなる。


「あ、お兄ちゃんが流ちゃんのこと襲ってる！」


「優奈！　神崎を捕まえろ！」


「いやんハジメくんったら強引なんだから」


「あははは！」


優奈の高らかな笑い声が、いつまでもどこまでも続いていくのだった。



ＥＮＤ