数学の解答を見せてくれていた友人に急かされて、俺はシャーペンを走らせる。


ホームルームが始まるまで後3分ほどしかないが、神崎はまだ姿を見せない。


解答を写していくだけなのに気がそれてしまってなかなか進まない。


後2分。


後1分。


神崎は未だに現れない。


まさか学校に来ないつもりじゃないだろうな。


俺をあれだけ巻き込んでおいて、また登校拒否をしているんじゃないだろうな。


ふと顔を上げた瞬間、担任の咲田先生が教室へ入って来た。


タイムオーバーだ……。


友人が宿題を持って自分の席へ戻って行く。


俺は自分の宿題を見つめた。


残り1問のところで時間が来てしまった。


「みんな久しぶり! 元気だった!?」


咲田先生のやけに元気な挨拶が、神崎のいない教室に聞こえて来たのだった。