だいたい、俺が今こんな所で太陽に焼かれているのは、この家の人間が原因なのだ。


夏休みの貴重な一日を割いてでも、どうしてもここへこなければいけなくなった。


俺の家がこの城から一番近いから。


ただ、それだけの理由で俺は選ばれたのだ。


選ばれたといっても英雄のように喜ばしいものではない。


思い出しただけでも憂鬱になり、ため息が出る。


『お願い、大木君は家が近いでしょう? 少しでいいから、神崎君の様子をみてきてほしいの』


そう懇願する担任の咲田先生の……Vネックから見えるGカップの谷間。


あの時、先生は汗をかいていた。


今日ほどのとても暑い日で、放課後話があると教室に残された俺は咲田先生に何を言われても動じないつもりでいた。


困るような用事を押し付けられるのは、最初から予想できていたのだ。


なのに……先生の胸に一筋の汗が流れた。すぐに服が吸収してしまう、小さな汗の玉。


その汗を舐め取りたい。


健康男児が咄嗟にそんなことを考えてしまうのは、仕方ない事だと思う。


先生はその瞬間を見計らったかのように、『よろしくね』と、俺の肩を叩いて教室を出た。