結局数学の宿題をすべて終わらせることはできなかった。


俺はゆるゆると息を吐きだして重たい足を全身させる。


久しぶりに着る制服は暑苦しくて、思っていた以上に窮屈だ。


教室へ足を踏み入れると、すでに登校して来ていたクラスメートたちが嬉しそうに声をかけて来る。


約一か月ぶりの再開に、話題は雪のように積もっているようだ。


俺は友人たちの会話に混ざりながら、視線を泳がせてあいつの姿を探す。


あいつはまだ来ていないようだ。


あの日、神崎の背中を押した後連絡は取っていなかった。


どうなったのか気になったけれど、いずれ神崎の方から連絡をしてくると思っていた。


なんせ、俺の宿題はまだ終わっていなかったのだから。


でも、夏休み中に神崎が連絡してくることはなかった。


お前のことを当てにしていたのに来ないんだから、俺の宿題が終わってないのはお前のせいだからな!


第一声はそう言ってののしってやりたかったのに。


徐々に登校してくる生徒が増えて、あっという間に教室内には夏休み前の光景が広がる。


それでも、神崎はまだ来なかった。


なんだか嫌な予感がして、無意味にスマホ画面を確認してしまう。


当然のように神崎からの連絡は来ていない。


「どうした? 早く宿題写せよ」