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悔しいけれど、神崎はやっぱり頭がいいらしい。


教え方も丁寧でわかりやすく、俺の宿題はどんどん進んでいく。


真っ白だったノートも今や数式で埋め尽くされていた。


「今日はこのくらいにしとくか?」


神崎にそう言われて時間を確認してみると、3時間ほど経過していることがわかった。


俺はシャープペンシルを机に置き、両手を天に突き上げた。


体を伸ばすとバキバキと不吉な音が鳴る。


「そうだな。随分進んだし、残りはまた今度にしようか」


神崎がいてくれればあと1日あれば終わりそうだった。


優奈は遊びたくてうずうずしているはずだ。


でも、その前に……。


「あれから、どうなった?」


俺は神崎に視線を向けず、宿題の片づけをしながら聞いた。


「あぁ~……うん、まぁ。変わらずだな」


神崎にしては煮え切らない答えだ。


「変わらずか」


「うん。いつも通りだ」


横目で様子を確認してみると、ニカッと笑った顔があった。


それが無理をしているように見えるのは、俺の気のせいだろうか。


あんなファイルを見つけてしまった後だから、なにもかもがいつも通りというわけにはいかないだろう。


「あの時、すごいショック受けてたみたいだったけど」


「そりゃあな、ビックリしたからな。ハジメだって、ビックリしただろ?」


聞かれて俺は頷く。


地下室を埋め尽くしていたファイルが全部子供の情報だとしたら、一体どれだけの人数になるだろうか。


考えただけでも全身に鳥肌が立った。


「父親の会社を継ぐのか?」


「まぁ、そうなるだろうな」


神崎は途端に笑顔を消して答える。