優奈の暇つぶしはさて置いて、自分の宿題に関しては本当に困る。


頼れるのは神崎1人だ。


俺はスマホ画面に神崎の番号を表示させたり、閉じたりを繰り返した。


魂が抜けてしまった状態の神崎を見た今、やっぱりどう声をかければいいのかわからない。


元々電話は苦手だし、どうしたものか……。


ふぅと短く息を吐きだしてベッドに座った時、玄関のチャイムが鳴った。


同時に優奈が階段を駆け下りていく足音が聞こえて来る。


俺は思案しながら、聞くともなしにその音を聞いていた。


優奈が玄関を開ける音。


同時に甲高い悲鳴が聞こえてきてハッと顔を上げた。


なんだなんだなんだ?


握りしめていたスマホを床に落とし、大急ぎで玄関へ向かう。


ドタドタと足音を響かせて一階へ下りてみると、そこには大男が立っていた。


「よぉハジメ! 久しぶりだな!」


満面の笑顔を浮かべてそう言う神崎に、俺は目を丸くした。


「流ちゃん、どうして遊びに来てくれなかったの!?」


「悪い悪い。ちょっと忙しかったんだ」


神崎は優奈の頭を撫でながら勝手に家に上がり込んで来た。


その様子は俺のよく知っている神崎で、見た瞬間安心感が胸に膨らんで行く。