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《神崎邸秘密の扉大作戦2》が無事終了してから3日が経過していた。


夏休みが終わるまで後5日ほどだ。


俺は相変わらず机に向かって数学の難問に取り組んでいた。


神崎が教えてくれるはずだったけれど、あいつからの連絡はまだない。


心の整理がついていないのかもしれないと思うと、家庭教師代行を催促するのも気が引けた。


「今日も流ちゃん来ないね……」


俺のベッドを背もたれにして漫画を読んでいた優奈が、呟くように小さな声で言う。


その声はなんとも憂いに満ちていた。


まるで恋する乙女のようで、一瞬嫌な予感が胸をかすめる。


「そんなに神崎に会いたいか?」


「そりゃあ会いたいよ! 流ちゃんと一緒にいたら楽しいし」


そう言ってはぁ、と大人びたため息を吐きだす。


「お兄ちゃんといてもつまんないし~。まだ宿題終わらないの?」


キャミソールから伸びた白い手を振り回して、暇だとアピールし始めた。


どうやら神崎の存在は優奈にとって都合のいい暇つぶしみたいだ。


優奈が神崎に恋心を抱いているのかも知れないと懸念したけれど、今の様子を見ているとその心配はなさそうだ。


俺は優奈にバレないよう、安堵のため息を吐きだす。


「お兄ちゃん、流ちゃんと連絡取ってるんでしょ?」


「いや?」


「はぁ? なんで連絡しないの? なんのために番号交換してきたの!?」


途端に優奈は立ち上がり、俺に詰め寄った。


「そんなこと言ったって、神崎も暇じゃないだろうしなぁ……」


あの憔悴した様子を思い出すと、どんな風に連絡をとればいいかわからなかった。


人を慰めることは得意じゃないんだ。