神崎の叫びが地下室にこだまする。


「そんなの、わからないだろ? 俺のファイルだってあったんだ。でも俺の親はバカみたいに元気で仲よしで、離婚なんてする気配は全くない」


早口で言いがら自分のファイルを拾い、元に戻した。


「あぁ。俺の母親は死別していたから、都合が良かっただろうな!」


神崎が怒りで震える。


顔は真っ赤に染まり、今にも暴れ回りそうだ。


「思い込みは良くない。会社のために子供を選んで再婚するとか、そんなのただの空想だ」


「これだけ膨大な子供の情報見ても、そう言うのか?」


神崎の声も震えている。


俺はそんな神崎を直視できなくなっていた。


すべてのファイルを確認したわけじゃないけれど、地下室に置かれているファイルにはすべて×印が書かれているのだろう。


そんな中、神崎は選ばれたのだ。


過去の成績や今の成績を確認し、会社を継がせるにふさわしいと判断されて……。


「あいつは……母親のことなんて愛していなかった……」


神崎の声は地下室の中に何度かこだまして、そして空しく消えて行ったのだった……。