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地下室へ伸びている階段は薄暗く、そして埃っぽかった。


神崎が3段ほど階段を下りて、壁に設置されているスイッチを入れた。


途端に階段はオレンジ色の光に照らし出された。


コンクリートがむき出しになった灰色の階段が13段ほど下へ続いている。


階段の両側もしっかりとコンクリートで固められているため、下まで降りてしまわないと地下室の様子は確認できなかった。


一段一段下がって行くたびに空気が冷たくなっていく。


夏の強烈な日差しは地下室までは届かない。


「なんか、ホラーゲームみたいだな」


前を歩く神崎がウキウキとした口調で言う。


狭くて薄暗い階段を下りきるとその先にゾンビが待ち構えていたりするのだろうか。


そう考えて軽く身震いをした。


でも、現実はそんな面白くて恐ろしい出来事は怒らない。


13段目の階段をすべて下りきって地下室の電気を付けてみると、そこには莫大なファイルが陳列されている棚が並んでいたのだ。


書斎の本棚にも引けを取らないファイルを見て、思わず口がポカンと開いていくのを感じる。


「すごいな。これ全部仕事の資料かな」


さすが大企業の社長だけある。


俺たちが読んだって何年かかっても理解できないであろう、難しそうなファイルに頭がクラクラしてきた。


神崎が棚に一歩近づいて、ファイルの背表紙を確認した。


その瞬間、大きな体が微かに震えるのを見た。


「どうした? そんなに難しいことが書かれてたのか?」


質問しながら神崎の隣に立ち、手に持たれているファイルを見る。


ファイルの題名を見た瞬間、俺は言葉を失っていた。


目を見開いてそれを見つめた後、何度も目をこすってみた。