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段ボールの移動は想像以上に簡単なものだった。


中身は空だし、地下室への入り口を塞いでいる部分だけ移動させればよかったから、時間にして5分ほどだっただろう。


しかし、出て来た床板を見下ろして俺と神崎は黙り込んでいた。


ここまでくれば後は地下室に入るだけ……だった、ハズなのに。


「鍵……か……」


床を睨み付けながら神崎が呟いた。


そう、地下室の入り口には鍵がかけられていたのだ。


試に何度か取ってを引っ張ってみたけれど、ビクともしない。


「地下室に鍵がかけられてるのって珍しいな。俺、初めて見たかも」


「ハジメ、そんなことで感心してる場合じゃないぞ。こんなの計画の内に入ってなかった」


神崎はそう言い、指先で顎をさする。


「鍵がなけりゃ部屋には入れない。今回は諦めるんだな」


俺は大きく伸びをして言った。


地下室の中身が気にならないワケじゃないけれど、諦めも肝心だ。


「ほら、段ボールを元に戻すぞ」


家に戻ったら夏休みの宿題をしないといけない。


数学は神崎にしっかりと教えてもらわないとな。


そう思った時だった、途端に神崎に腕を掴まれて引きずられるようにして秘密の部屋を出ていた。


そのままズルズルと歩いてあっという間に食堂の前だ。