パチパチと手を叩く神崎に、俺は更にカッとなる。


「今は真剣な話をしてるんだ」


「あぁ、してるとも。もしハジメが作家志望じゃなければその妄想は汚点にしかならない。自分の思い込みで暴走してしまっているし、相手まで巻き込んでいる。かなり自分勝手だ」


最後の『かなり自分勝手だ』という部分を強調して言う神崎に、俺は何も言い返せなくなった。


気の抜けたコーラみたいに勢いをなくしてしまう。


今の俺はまさにそんなコーラみたいだったのだ。


自分の考えが正しいと思い、勢いをつけて神崎へ怒鳴り散らした。


だけど、実際は炭酸が抜け切ったただの黒い砂糖水でしかなくて、相手に不快な思いだけを残す。


「親がいるから『普通』で、親がいないから『普通』じゃない。つまりかわいそう。そんな考え方は大人になってからでもできるんだよ、ハジメ君」


今度は、熱血教師のように、かけていないメガネを指で押し上げる素振りをしながら言う。


「はぁ……」